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教育ソリューションフェア2006
教育ソリューションフェア2006報告
子どものための安全・安心セミナー
〜身近な携帯端末の活用ポイントを探る〜
本社主催の「教育ソリューションフェア2006」が7月24、25日の2日間にわたって東京・秋葉原で開催された。「教育改革第2ステップ〜夏休み・先生の学校〜」と題し、教育特区の現状や学力問題を考えるシンポジウムのほか、小学校英語や子どもの安全・安心、国際理解教育、環境・エネルギー教育、食育、IT教育など学校現場の関心の高いテーマ別セミナーも実施。全国から参加した教育関係者らが活発な意見交換を行った。ここでは、第1日目に行われた「安全・安心セミナー」の内容から、子どもを守るための携帯端末の活用ポイントを紹介する。

■4つの講座で理解深める

機能やコストを比較し、子どもに合った機種を選ぶことがポイントフェア初日の「安全・安心セミナー」では、「子どもを守る携帯端末の活用方法」をテーマに、講演やワークショップなど4つの講座が開かれた。
最初に、東京大学名誉教授の板生清氏が「コンピュータを着る時代 子どもを守る方法は」と題して基調講演。ウェアラブルコンピューティングなど新しい情報技術と人間が役割分担しながら子どもの安全を守るしくみをつくることが大切と提言した。
続いて、携帯端末やインターネットを利用した位置情報サービスを提供するロケーション株式会社と、子どもの安全・安心のためのネットワークづくりを手がける株式会社ネットジーンが、携帯端末の具体的な機能比較や学校現場での導入事例を発表した。
セミナーのまとめは「児童・生徒を守る理想的なケータイを考えよう」と題し、講演と発表で得た知識をもとに、参加者自身が子どもに必要な携帯端末のあり方をワークショップ形式で話し合った。
現在各社から発売されている子ども向けの携帯端末の実物も参考にしながら、必要な機能を項目別に検討。各グループとも議論の中心になったのは、位置情報サービスの精度、メールやインターネット機能の必要性、導入費用や通話料などコストといった点で、各社のサービス内容を比較検討し、家庭や子どもの状況に合わせた選択が必要という声が多かった。

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■PHSの位置検索

ロケーション(株)技術部長 森山重樹氏一口に子ども向けの携帯端末と言っても、携帯電話やPHS、通話機能のない専用端末などいくつかのタイプがあり、機能やコストが異なる。そこでワークショップに行われたロケーション株式会社の発表では、「児童向けGPS携帯電話・PHSの全比較」として、機能やコストなど端末選びの判断材料となる情報を提供した。
子どもの安全・安心に関わる機能として、端末の現在地を知らせる位置情報サービスへのニーズは高いが、携帯電話とPHSでは位置を割り出す方式が異なるため、利用環境によっては誤差の生じることもある。
携帯電話で使われているのは、ネットワーク支援型GPSと呼ばれる方式。衛星との通信が難しい環境では基地局からの電波などで現在地を算出するしくみで、測位精度(誤差)は一般に5〜500m前後とされる。
PHSの場合は、基地局から送られてくる情報や電波の強弱を分析し、端末機が現在地を算出する。複数の基地局を組み合わせる方式では、測位精度は約70mとなっている。
発表を行った同社の森山重樹技術部長は、「屋内や地下でも測位できるため都市部に強いPHSに対し、GPS携帯は郊外や過疎地域でも測位可能など、同じ位置情報サービスでも違いがある」とし、携帯電話の場合はGPS衛星を補足できない場所での精度アップ、PHSは地形データや地図情報を利用した測位精度全般の向上が今後の技術的課題と述べた。(別掲表1)


携帯電話とPHSの位置情報サービスの特徴



今回は同一条件下での位置測定の精度を比較するため、その場で携帯電話とPHSの位置検索をする実験も行った。セミナー会場が秋葉原駅前のビル内だったこともあり、もっとも精度が高かったのはPHS。携帯電話は課題とされるGPS衛星を補足できない状況となり、2社とも数百mの誤差が出ていた。
森山氏は、この実験結果だけで両者の優劣を論じることはできないと強調し、「携帯端末の位置情報サービスを理解する客観的な情報のひとつとして受け止めてほしい」と付け加えた。


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■電磁波の強さにも注目

子どもの安全という視点から携帯端末を見る際、意外に見落とされがちなのが電磁波の問題だ。
電磁波の人体への影響については現在も検証中で確固とした結論は出ていないが、各国ともSAR値(人体が電磁波から吸収するエネルギー量)の上限を設定し、携帯電話やPHSなどの無線機器も許容量を超えないことを義務づけている。イギリスやフランスのように、16歳未満の子どもに携帯電話の使用を控える勧告を出している国もあるという。
「電磁波という点では、携帯電話とPHSの違いは明確。各社の子ども向け端末のSAR値を比較すると、PHSは携帯電話の10〜20分の1と低電磁波であることがわかります」(別掲表2)


子ども向け携帯端末の電磁波(各社HPより)



発表のまとめでは、携帯電話・PHS各社の子ども向け端末を、位置情報、音声通話、メール、インターネット、料金など6項目で比較した表を提示し解説を加えた。(別掲表3)


子ども向け携帯端末を6つのポイントで比較



表を見ると、場合によっては保護者が設定を行い機能を制限する必要のある携帯電話に対し、PHSはサービスそのものを停止できるという特徴があるほか、インターネット機能がないことや、基本料と通話料が安いこともわかる。
森山氏は、子どもの安全をコンセプトにした多くの携帯端末やサービスが提供されているが、「本来は便利なメールやインターネット機能も使い方を誤れば子どもを危険に晒す要因になる」とし、「子どものために本当に必要なのはどんな機能を持つ携帯端末なのか、利用環境を含め、さまざまな要素から総合的に判断することが大切」と提案した。

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■シンプル&低コストが理想

発表後のワークショップでは、参加者がグループに分かれ子どもの安全・安心のために必要な携帯端末の機能やデザインを検討した。
東京都内の小学校校長らが参加したグループでは、位置情報サービスやメール機能、コスト、電磁波などの課題を巡って活発な意見交換が行われた。
位置情報サービスは可能な限り精度の高いものを搭載したいというアイディアに対し、「子どもの現在地を確認できるのは保護者の『安心』であり、それが子どもの『安全』には直接つながらないのでは」という意見が出ていたほか、「登下校中に携帯端末を利用する際の交通安全や、電磁波の問題こそ子どもの安全に関わる問題」、「保護者の負担を考えると低コストのPHSが良い。重要なのは、携帯端末の利用に関する学校と家庭の責任を明確化すること」といった声もあった。
各グループの考えた「理想のケータイ」に共通していたのは、「位置情報サービスが利用可能」「インターネット機能は不要」「メール機能は必要最小限」「月額使用料は1000〜2000円以内」といった点。
このほかのアイディアとしては、保護者が子ども用端末の設定をする手間を考え、作業時にはテンキーの付いたパーツを接続し、設定後は切り離して3つ程度のボタンで簡単に使えるものや、使い慣れた携帯端末で設定したデータを読み込める機能、ボタンひとつで「着いたよ」「帰るよ」といったコールを保護者に送れる機能などもあった。
またデザイン面では、携帯端末の存在を見せることが防犯につながるのか、隠したほうが良いのかで意見が分かれ、現状の携帯電話型から腕時計型、ランドセルに内蔵されたタイプなどさまざまな考え方が出た。
今回のワークショップの進行役を務めたロケーション株式会社の酒田健治取締役は、「WILLCOMコアモジュール フォーラム」位置情報ワーキンググループのリーダーでもある。同フォーラムは、ウィルコム株式会社が開発した多機能通信モジュール「W-SIM(ウィルコムシム)」を核に、社会のニーズを踏まえた新たな情報通信製品やサービスの開発を目指すもので、多くの関連企業が参画している。
「子どもや家庭の現状を知る教育関係者の皆さんから、携帯端末に対する率直なご意見をうかがうことができました」という酒田氏は、「ここで出たアイディアは必ずフォーラムに持ち帰り、皆さんの期待に応える理想の端末づくりに生かしていきます」とまとめた。


W-SIM(ウィルコムシム)とは?



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コンピュータを着る時代子どもを守る方法は
東京大学名誉教授 NPO法人「WIN」理事長 板生 清 氏


人と技術の役割を考えて

東京大学名誉教授 NPO法人「WIN」理事長 板生清 氏「ウェアラブルコンピューティング」という言葉を耳にする機会が増えてきました。直訳すると「着られる、身につけられる」という意味で、センサーやICタグのような情報端末を身につけることで情報ネットワークを利用するコンピューティングの形を指します。
例えば人間の身体は、脳波や心拍などさまざまな情報を発信しています。センサーを身につけてこうした情報をモニターすれば、身体の異常をいち早く発見して治療するといったこれまでにない医療が可能になります。
人体だけでなく、植物や動物、人工物など身の回りのあらゆるものは情報を発信しています。これらが「センサーネットワーク」でつながることにより、生命や健康、さらには地球環境を守る新しいシステムをつくることができるのです。
こうしたウェアラブルコンピューティングの技術は、子どもたちの安心・安全を守るためにも重要な役割を果たすと考えられており、私が座長を務める文部科学省「安心安全科学技術委員会」でも、多くの研究者や企業が参画し技術研究や情報交換を行っています。
すでに使われているGPSや防犯ブザー機能付きの携帯端末でも、子どもの居場所を確認したり犯罪を抑止したりする効果は期待できますが、技術的には改善の余地があります。なかでも、建物内や地下などどこにいても1m以内の精度で位置情報を知らせる技術や、ウェアラブルな端末の開発は重要です。
例えば動物の世界で弱者が自分を強く見せる手段を持つことで自己防衛を図るように、ウェアラブルコンピューティングが人間の子どもたちに自己防衛の新たな手立てを提供できるのではないかと私は考えています。子どもの安全を脅かす要因が増えるなか、各地域で行われている人海戦術的な安全対策を情報技術が効果的にサポートする。「コンピュータを着る時代」の子どもを守る方法とはこうしたイメージだと思います。
ここで注意してほしいのは、技術だけで子どもの安全は守れないということです。すべてを解決できる技術も完璧と言える安全対策もありません。しかし技術にしかできないことや、技術の利用が適している分野はあります。子どもの安全を守るため、人にできることと技術にできることを分け、自分たちに今なにができるか具体的に考えることが大切なのです。
私たちはいま、めまぐるしい技術革新の只中を生きています。こうした状況のなかで、技術を人間の「僕」として、道具として使いこなすためになにが必要なのでしょうか。すべてを技術に頼ったり、技術の弱点ばかりに着目し全否定したりするようでは建設的な議論はできません。技術に対する見方、いわば「技術観」を確立し、共通理解を深めていくことが重要だと思います。
一方、子どもの安心・安全を広い視野で捉え、さまざまな技術や人の力を生かしたソリューションを提案していくうえでは、問題に関心を持つ人々が集う場も求められます。私もNPO法人「WIN」を主宰していますが、NPOこそこうした場に相応しいと考えています。多くの人々が企業や組織の枠を越えて集まり、「市民のための技術開発」に取り組むことが今後の課題ではないでしょうか。


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学校と家庭をつなぐ安心安全ネットワーク形成
株式会社ネットジーン シニアマネージャー 大知昌幸 氏


デジタルとアナログの融合で子どもを守る

株式会社ネットジーン シニアマネージャー 大知昌幸 氏セミナーの3つめのプログラムでは、株式会社ネットジーンの大知昌幸シニアマネージャーが「学校と家庭をつなぐ安心安全ネットワーク形成」と題し、携帯端末やITを活用した安全管理システムの導入事例を紹介した。
子どもの安全を守るために有効なのは人の目による見守りや送迎といったアナログ的活動だが、肉体的負担が大きく長続きしないのがネック。そこで携帯端末などデジタル機器の活用が注目されており、保護者のニーズも高まっていると大知氏。
「地域や学校で携帯端末利用のルールをつくることが大切。メリットとデメリットを整理し、利点を生かすルールづくりをすべき」と述べた。
例えばネットの有害情報やメールによる危険といった携帯端末のデメリットとされる点は、こうした機能に制限を加えることで対応できる。
大知氏は、「ルールがあいまいなまま導入するとトラブルが起きやすい。携帯端末の有効利用を妨げている要因は、学校側の無関心や情報不足では」と指摘した。
続いて、同社の「通学ケータイ」を導入した奈良市の帝塚山小学校の事例を紹介。GPSや防犯ブザー、ボタンひとつで登下校の無事を知らせるメールを送信できる機能を搭載した端末で、防犯ブザーが作動すると緊急メールが保護者と同社に送信され、子どもの現在地を確認できるしくみになっている。
同校では「通学ケータイ」学校・保護者間のコミュニケーションツールとしても活用し、学校と保護者が緊密に連携して子どもの安全を守る体制を整えているという。
熱心に説明を聞く受講者大知氏は、携帯端末を持たせれば保護者は「安心」できるが、それが子どもの「安全」とは言えない。人が見守り、心と心がつながることが一番の安全対策になるとし、「学校や地域の状況に合わせてデジタル機器を使いこなすことにより、アナログ的な活動で生まれる隙間を埋める。こうした『アナログとデジタルの融合』がひとつの方向性と言えそう」とまとめた。
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