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環境・エネルギー学習の授業づくり
環境・エネルギー学習の基礎と展開
(03) 日本のエネルギー問題 課題を適切にとらえ授業を
千葉大学非常勤講師  向山 洋一氏 (平成16年01月16日)

日本の子どもたちは教育でエネルギーについて教えられていない

日本の子どもたちのエネルギー問題についての知識。それはマスコミからの風評がほとんどである。事実を数値で踏まえず、印象によって判断する受け取り方である。マスコミの責任ある報道姿勢がほとんどない以上、授業によって正確な知識を教えなければならない。それが教師の仕事である。
例えば東京電力が原子炉内部の構造物のひび割れを隠していたので、非難された。それはその通りである。新聞のトップニュースになった。しかし一連の報道姿勢は疑問がある。根本問題が触れられていないのだ。それは「設計基準」を「維持基準」に当てはめた非現実的な適用にあるからだ。

千葉大学非常勤講師  向山 洋一氏
千葉大学非常勤講師
向山 洋一氏
「設計基準」と「維持基準」

「設計基準」とは何か。それは、建築物を作って納品する時の基準である。新品基準といった方が分かりやすい。次の法令による。
【電気事業法第47条(設計基準) その事業用電気工作物が第39条第1項の経済産業省令で定める技術基準に適合しないものでないこと。】
新品基準は新しく完成した装置に適用される。装置は使うと古くなる。いつまでも新品でいられない。そこで運用基準がつくられる。維持基準である。
「維持基準」とは何か。それは、建築物の品質を維持する基準である。次の法令による。
【電気事業法第39条第1項(維持基準) 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を経済産業省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない。】

事実を正確に分析し、授業化

ところで、日本の原子力発電所では、新品基準のみが適用されてきた。
自動車なら常に新車の状態を保つということだ。自動車の車軸には細かい傷がたくさん入っている。高速で回転する箇所は「応力」によって繰り返し力を受けるからだ。新幹線の車軸でも同じである。飛行機も一回の飛行で強い力がかかる。クリープ破壊という細かなしわが金属に起こる。それを定期検査で確認しながら飛ぶのである。いちいち全部ニュースにしていたら大変だ。原子炉も同様である。今回のひび割れの「シュラウド」(=下の写真)というのは、「ステンレス製の円筒状の『水の仕切り板』」である。五重の壁とは違う。そこにちょっとひびがあったからと言って、安全上どうということのない性質のものである。ひびのビデオを見た教師はこんな些細なものかとみんなびっくりしていた。これを、マスコミは過度に報道した。その報道を子どもたちは見る。ポイントの部分が学校で授業されていないのだから、それらの情報のみが刷り込まれることになる。リスクとコストを冷静に見ることができていない。教師は事実を正確に分析し、授業化しなければならない。
危険というのなら、そのほかのエネルギーに関することも公平に入れる必要がある。火力発電を取り上げてみよう。鉱山から石炭を掘り出す場面だけで、明治三十一年から昭和二十年までに災害回数は三百万回を超える。死者は三万人以上。今でも世界では毎年五十人以上の死者が出ている。化石燃料を用いた発電では、空気中に放出される細かなちりによって全米で毎年三万人の死者が出ているとの研究もある。水力ではインドのグジャラーチで発電所のダムが崩壊し一万五千人の死者が出た。イタリアのバイオントでもダムが崩壊して二千人が死亡した。これに対して原子力発電では、チェルノブイリでの死者三十一人である。スリーマイル島では炉心がメルトダウンするという致命的な事故が起きたが死者は一人も出ていない。しかもその後の教訓でオペレーターのミスを回避するシステムが完成している。チェルノブイリは黒鉛炉という格納容器のない危険なものだったが、そのことも教えられていない。水力や火力では、何万人、何十万人の死者が出ていることも教えられていない。


原子炉のシュラウドの写真(本文参照)
原子炉のシュラウドの写真(本文参照)
東京電力が1年間原子発電を止めると石油を運ぶタンカー(20万トン級)だけでも百隻以上が余分に中東との間を往復しなければならないという。日本のシーレーンには南沙諸島があり、各国が領有権を主張している。決して安全な海域ではない。この「シーレーンのリスクとコスト」も教えられていない。私たちはこうした大切な課題についての授業を提案し、実践し、「インターネットランド」(http://www.tos-land.net)でも紹介している。


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