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学校が地域の「特色」になる
京都の伝統から生まれた新しい学校
〜京都御池中学校・複合施設(京都御池創生館)〜 |
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| 第11回 2007年1月22日付 本紙「企画特集」から |
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写真 :
京都市立京都御池中学校
校長 長者(ちょうじゃ)美里氏 |
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地域の特色を生かした学校づくりが各地で広がる中、「市民ぐるみ・地域ぐるみの教育」を目指した教育改革を進める京都市に昨年4月に誕生した、京都市立京都御池中学校【長者(ちょうじゃ)美里校長・生徒432名】・複合施設が注目を集めている。小中一貫教育のコミュニティ・スクールに、保育所や老人デイサービスセンター、オフィス、商業店舗などを併設した大規模な複合施設は、全国的にも例が少ない。地域の思いと京都市の教育改革のコンセプトを反映させた新しい学校の概要を、長者校長に聞いた。
地域に受け継がれる「番組(ばんぐみ)小学校」の精神
京都御池中学校・複合施設(京都御池創生館)は市役所から徒歩5分ほど、メインストリートの御池通に面した中心市街地にあり、校区は都の伝統と文化を色濃く残す14地区から構成されている。
この地域では、明治初期に市民が資金を拠出し、各地区ごとに「番組小学校」を創設した経緯があり、「地域で子どもを育てる」という精神はいまも受け継がれていると長者校長は言う。
「番組小学校」を母体とする小中学校は戦後も存続してきたが、昭和60年代から少子化が進展。これを受け、それまで10校あった小学校が平成7年には2校に統合されるなど、学校再編の動きが出てきた。平成13年には、自治会やPTAが合同で、地域の3つの中学校の統合に関する要望書を市へ提出。14の自治会や地域コミュニティ、PTAの代表、学校関係者らが参加する新中学校設立推進委員会が発足し、新しい学校づくりへの議論を始めた。
平成15年4月、3校を統合した京都御池中学校が、旧城巽中学校の校舎で開校した。市はこれに合わせ、地域のニーズに対応する「まちづくり・ひとづくりの拠点」となる新校舎の検討を開始。この結果、保育所や老人デイサービスセンター、地域包括支援センターといった教育と福祉に関する施設に加え、商業施設や観光トイレ、オフィススペース、災害に備えた物資備蓄倉庫などの併設が決まり、中学校も含めた複合施設の名称は、公募の結果「京都御池創生館」となった。
「かつての番組小学校も、地域の自治会館や消防団を併設していましたから、この地域では学校の複合施設化は珍しいことではないのです」と長者校長は語る。教育という視点だけでなく、地域のニーズも踏まえた多様なアイディアを学校づくりに取り入れるという「伝統」が、まったく新しい学校・複合施設を誕生させたとも言える。
政令指定都市で初めてPFI手法による整備
一方、市が進める教育改革の取り組みを反映し、京都御池中にも一段の再編が加えられることになった。「『小中一貫コミュニティ・スクール』というコンセプトのもと、近隣の2つの小学校と連携し9年間の一貫カリキュラムを実践します」と校長。5年間を既存の小学校、4年間を新設の中学校で学ぶ「5・4制」の小中一貫教育校だ。
施設の建設や運営にPFI手法を採用していることも大きな特色になっている。公共施設の設計や建設、運営、維持管理に民間の資金やノウハウを導入することにより、コストダウンと効率的なサービス提供を実現するというもので、政令指定都市の学校施設での採用は、京都御池中が初めてのケースとなる。
地域の思いに行政が応え、民間のノウハウも導入するという新しい枠組みのもとで進められた京都御池創生館の整備。地下1階地上7階建て、延床面積約2万平方メートルの複合施設は平成18年2月に竣工し、同4月から中学校を含むすべての施設の利用がスタートした。
ゆとりの空間づくりと自然を感じさせる工夫
長者校長の案内で新校舎・複合施設を見学することができた。
現在、京都御池中では建物の2階から5階までを教室として利用しており、平成19年4月の「5・4制」開始にともない5階は小学校スペースとなっている。上階のオフィススペースも、生徒数の増加に合わせ教室として利用できるように設計されているという。
「廊下が広く、生徒が自由に過ごせるフリースペースも随所に配置されていて、全体にゆったりした造りだと感じました」と長者校長は新校舎の第一印象を語る。
ゆとりのある空間づくりの一方で、市街地の学校らしく敷地を有効活用する工夫も多い。アリーナ(体育館)と、武道場としても使えるサブアリーナは5階に設置しているほか、6階屋上にはプール、7階屋上には屋外運動スペースもある。
5階には、二条城の「松鷹図」を襖に再現した和室も設置されており、茶道の練習のほか、夜間や休日にはアリーナとともに地域の人々にも開放している。
「茶道具一式は地元の方から寄付していただいたものですし、華道や舞踊などはプロの方が子どもたちを指導してくれます。学校として力を入れた図書館の整備にも地域の皆さんが協力してくれました。地域のさまざまな支援が、学習環境の充実につながっているのです」と校長。
環境への配慮も随所に施されている。廊下の床面には竹材、生徒の机の天板には檜の間伐材などのエコマテリアルが使われているほか、風力や太陽光発電、燃料電池といった新エネルギーシステム、井戸水や雨水をトイレ洗浄や散水に利用する設備も導入。自然通風を促す設計や屋上緑化など、生徒たちが自然環境を身近に感じられるような工夫もある。
日常的な世代間交流で学校が知恵を伝える場に
複合施設では常に人の出入りがあるため、子どもたちの安全確保にも十分な対策がなされている。電子錠付きの校門には防犯カメラとインターホンを設置し、外部からの訪問者を事前に確認できるようになっているうえ、施設全体にも緊急通報システムが導入されており、管理室には警備員が常駐している。また、和室やアリーナなど地域開放も行う施設と、普通教室のように学校だけが使う施設は内部で仕切って人の出入りを制限することができる。中学校やデイサービスセンター、保育所にはそれぞれ専用の入口を設け、各施設が一定の独立性を保てるように配慮してある。
建物1階には、市が運営する保育所と老人デイサービスセンター、社会福祉士やカウンセラーが高齢者の生活サポートを行う地域包括支援センターが入っており、毎日90人ほどの乳幼児と30〜40人のお年寄りが通ってきて一日を過ごす。
また、御池通に面した1階南側には、イタリアンレストラン、セレクトショップ、ベーカリーカフェが店舗を構える。長者校長は、「どのお店も、立地や学校施設への出店という条件を考慮して選ばれたそうで、学校の教育活動にも積極的に協力してくれます」と話す。
同じ御池通沿いの校門脇には、自治会館や消防分団用の建物がある。この一角に、市民や観光客が自由に使える「観光トイレ」を設置しているのも、国際観光都市らしいユニークな試みだ。こうしたさまざまな施設が同居する建物は、中学校のグラウンドを囲むコの字型に配置されており、「お互いの活動が見通せることが、みんなに良い影響を与えている」と長者校長は言う。
「グラウンドでランニングする生徒に施設のお年寄りが声をかけたり、運動会のダンスの練習を見た保育所の子どもたちが一緒に踊ったり。世代を超えた交流が、日常のなかで自然に生まれてきました」
さらに校長は、4月の新校舎移転後、「地域の人々が生き生きとして生徒たちと接してくれている」とも話す。複合施設という場を利用した日常的な交流により、学校が「地域が受け継いできた知恵を次世代に伝える場所」として定着してきたことが背景にあると見ている。
地域や人とのつながりが学校と教師を変える力に
学校も、地域の人々や企業と連携した授業づくりには積極的だ。街の伝統や歴史を生の声で聞く授業のほかにも、1階のレストランで指導を受けた生徒たちがオリジナル料理を街のイベントで販売したり、漆の商店から融資を受け伝統工芸品を制作・販売したりするなどキャリア教育につながる活動や、地域のラジオ局に放送部や学年の生徒たちが番組を持ち、学習活動の様子を紹介するという試みもある。社会とのつながりのなかで学ぶ活動を行ううえで、複合施設の利点は大きい。
一方で、他の施設や組織との共同歩調が求められる場面は格段に増えることになる。例えば京都御池創生館の避難訓練はすべての施設で合同実施するため、学校だけが単独で行動することはできない。長者校長も、「ここに入っているさまざまな施設のうちの一部という感覚で学校を運営している」と話す。
地域の人々や企業との日常的な交流や、他の施設との連携や調整は、同校の教員にとって負担ではないのだろうか。
長者校長は、「負担と言えばそうかもしれませんが、大切なのは意識を変えること。私は、こうした複合施設のなかで学校が他の施設や人々と一緒に活動することは、むしろ実社会の姿に近いと考えています」と答える。
「子どもは、家族や教師だけでなく、地域のいろいろな人たちとのつながりのなかで生きていくものです。だからこそ、多様な人々と積極的に関わることにより、学校も教師も変わっていくことが大事なのではないでしょうか」
既述のように同校ではこの4月から「5・4制」の小中一貫教育が本格的にスタートし、御所南小と高倉小の6年生にあたる子どもたちが新校舎に移ってくる。地域の人々とのつながりを提供する複合施設と9年間の一貫カリキュラムの組み合わせが、今後どのような成果を上げるのか注目される。
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| ▲校舎はグラウンドを囲むコの字型に配置されている |
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▲地域の人も力を貸してくれた図書館 |
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| ▲京都ならではの本格的な茶室 |
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▲イタリアンレストランなど、高級ショップも学校に隣接している |
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| ▲学校敷地内にある観光トイレ。多くの観光客が利用するこのトイレは、おもてなしの心を養う場として生徒たちが清掃を行う予定 |
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