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人権教育と学校教育 〜今、求められる「人権」の学びかた〜
(財)人権教育啓発推進センター理事長 横田洋三氏に聞く |
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| 第8回 2006年8月28日付 本紙「企画特集」から |
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写真 :
(財)人権教育啓発推進センター
理事長 横田 洋三氏 |
プロフィール 財団法人人権教育啓発推進センター理事長。中央大学法科大学院教授。国連人権促進保護小委員会委員。国連大学学長特別顧問ほか。専門分野は「国際機構論」「国際人権法」など。これまで国連人権委員会ミャンマー担当特別報告者など歴任。 |
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「人間が人間らしく生きていくために、生まれた瞬間から備わっている権利」―それが「人権」だ。サッカーW杯ドイツ大会の総合テーマに選ばれるなど、私たち一人ひとりの生命や自由・平等を保障し、日常生活を支える非常に大切な概念だ。しかし一方で「人権」に対する意識は、自然に養われるものではなく、子どもの頃から・教育・によって育む必要がある。今回、この「人権教育」について(財)人権教育啓発推進センターの横田洋三理事長にインタビューすると同時に、どのように計画し実践していけばよいのか、その具体的なあり方を探った。
■「知識」に偏らず体験の活用を
まず、人権教育の現状、意義と重要性について教えてください。
すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、国連は1995年1月1日から2004年12月31日までの10年間を、「人権教育のための国連10年」と定め、人権教育に力を入れてきました。さらに2005年1月1日からは新たに「人権教育世界計画」を発足させ、3年後にあたる2007年の12月31日まで、世界の初等教育における人権教育に力を入れようと目標を設定して現在さまざまな活動が行われています。つまり世界的に人権教育の重要性が議論されるようになったのは、1995年以降ということになります。
それまでの人権侵害といえば、警察官や刑務所の看守など特定の職業の人たちが起こすケースがほとんどでした。これについては裁判制度の整備など「法律上の人権保障」の観点からある程度改善されてきました。しかし、ルワンダにおける住民の大量虐殺など昨今の内戦における人権侵害は、ごく普通の市民が隣人・知人に対して平然と起こしています。このルワンダの場合は50万人以上が犠牲になったといわれていますが、実際に手を下した加害者はほとんどが一般市民。それも自分から率先してというより周囲から煽られたり、そうしないと家族が殺されてしまうという悲惨な状況があったり・・・。これは何を意味しているのかといえば、すべての人がもっと人権の重要性を認識し、日常生活の中で「絶対に人権を守る!」という“文化”を築く必要がある―。こういう認識に立ち15年ほど前に、国連の中で「人権教育をきちんとやろう!」という合意が生まれ、現在へとつながっています。
日本もまたそうした世界的な動きに呼応しているのですか。
ええ。非常に素早い対応でした。その流れを受け1995年に政府は、総理大臣を本部長とする「人権教育のための国連10年推進本部」を設置。国内行動計画の策定作業を進め、1997年には計画をとりまとめました。その意味でも日本は人権教育の・模範生・といっても過言ではありません。関連省庁としては、国連との関係で外務省、憲法や法律との関わりでは法務省などが対応していますが、人権教育ということもあり、中でも文科省が重要な役割を担っています。第1次とりまとめを踏まえた上で今年の1月には、・学校教育における人権教育の改善・充実の基本的考え方・学校教育における人権教育の指導方法等の改善・充実―という2本柱で構成された「人権教育の指導法等の在り方について」の第2次とりまとめを作成し発表。文科省↓教育委員会↓学校現場という一連の流れの中で、人権教育の理論的・実践的な指針として提供しています。
ちなみに当財団(人権教育啓発推進センター)は、政府の行動計画の一環として人権教育に携わる自治体等の責任者に対する研修をはじめ、自治体が行う一般市民向け人権教育啓発活動に協力して一緒にプログラムを策定し、場合によっては講師の派遣などのアドバイスをしてきました。さらには人権に関わる子どもや一般向け、企業向けの資料の作成もしています。
国連はどのような活動を行っているのでしょう?
欧米諸国、日本といったいわゆる先進国に対しては原則として各国にまかせています。一方で人権状況については5年または2年に1回というペースで定期報告書の提出を義務づけ、その内容を関連機関で審議し不足点や改善点を指摘し是正してもらうという形で進めています。途上国に対しては、人権教育啓発活動を行う人材を育成するため、人権の専門家を派遣したり、必要な経費を負担する諮問的サービスを実施したり、手厚く対応しています。ただ人権状況が掴めない、あるいは掴ませたくないという人権状況の悪い国々に対しては、調査官を派遣し報告書をまとめてもらい、非難決議や改善勧告を発動することもあります。
日本の具体的な活動についてはいかがでしょうか。
日本が扱っているテーマとしては、古くから存在している同和問題、DV(ドメスティック・バイオレンス)など女性に対する差別・暴力の問題、在日韓国人・朝鮮人など在日外国人の処遇問題が中心です。例えば同和問題に対しては「わが国固有の重大な人権問題」と位置づけ、これまでの教育・啓発活動で積み上げられてきた成果などを踏まえ、差別意識、進学問題、結婚問題、就職の機会均等などの観点から施策を講じています。
最近重要性を増しているのは高齢者や障害者、子どもたちの人権問題です。これは現在の日本のおかれた状況を、ある程度反映していると思います。つまり高齢化社会でお年寄りが増え、そうした人たちに関する人権問題が増えてきます。高齢者になると体の自由がききにくくなり、障害を抱える人も多くなるので、そうした人たちに関する人権問題も増えてきます。一方で子どもたちを取り巻く環境も懸念すべき状況となっていて、少年非行の凶悪化・粗暴化、親による児童虐待、また児童買春・児童ポルノのまんえん、依然憂慮される校内暴力やいじめ、不登校、さらには薬物乱用など子どもの健康を害する犯罪の多発・・・。非常に厳しい状況が存在しています。
そうした中で「人権」を考えていく視点とは?
高齢者や障害者、子どもたちが基本的人権の享有主体として最大限に尊重されるような社会の実現を目指すことはもちろん、私たち一人ひとりが「生き方の問題」として現実を真正面から受け止めることだと思います。
例えば障害がある人について、私たちは「普通の生活ができなくて、その分なんとなく生きがいが失われている」と考えがちですが「障害」を1つの「個性」としてとらえてみる。これまでのものの考え方を転換するのです。そして障害者は「障害という個性を持つ一個の人間」として考える・・・。こうしたものの考え方を周囲の私たちも、ご本人たちも持つような状況になると、世の中は非常に住みよくなっていくのではないでしょうか。そういう考え方に私たちを導いてくれる基本が、「人権教育」。一人ひとりの人間が、自分や他人に対し、たとえ弱点があっても「弱点」と思うのではなく、「それが自分」「それが相手」―と・個性・としてとらえること。つまりお互いのQOL(生活の質)を認め高めるようなとらえ方をすることなのです。
■人権の精神を行動の基礎に
では人権教育は具体的にどう実践していけばよいのでしょう。
教育というと「知識」に偏りがちで、「人権問題に関するジャンル」「憲法の人権規定」など、知識を持たせることに重点を置きがちです。しかし人権とは考え方の問題。人に対する思いやり、連帯、そして人の生き方への深い理解・・・。日常行動にそれらが自然と表れるようになることがねらいです。
ですから、幼稚園段階、さらには家庭教育から実践して欲しいですね。家庭ではもともとある親子の人間的なつながりを育て、尊重していくことが人権教育になりますし、もし祖父母がいれば日常的な触れ合いから、お年寄りの生活をごく自然に体験し理解できるので、立派な人権教育になります。
学校教育ではどうでしょう。
学校教育は家庭と違い、生活=教育というわけにはいきません。とはいえ小学校でもやはり体験重視で、例えば低学年〜中学年までは、高齢者介護施設を訪問し、2、3時間一緒に折り紙で遊んだり、おやつを一緒に食べたりしながら、会話をします。お年寄りは“人生の達人”ですから、その豊富な体験談を通じ子どもは自然に人間や人生について吸収できる・・・。それが考え方や生き方を育むと思います。先生は「おじいさんやおばあさんには優しくしよう」などと細かな指示をする必要はありません。どう対応すればよいのか子どもたちはわかります。場を設定し、あとはただただ見守っていればよいと思います。また、障害がある人たちで運営する牧場など、障害者の施設も増えています。こうした施設での労働体験なども積極的に取り入れて欲しいですね。
こうした教育を早期に行うと、中学校や高等学校で知識として人権を教わった場合に、その意味を具体的にイメージできます。つまり知識として得たことを、自分の中できちんと現実として理解できる。理解できたということは自分のものにできたということ。そうなって、はじめて行動へとつながっていく。「人権の精神をその人の行動の基礎にする」という人権教育のねらいが達成されるのだと思います。(完)
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| ▲人権教育実践に役立つ教材。各種の人権問題を丁寧に分かりやすく解説している「マンガで考えるみんなの人権―人権ってなんだろう!?」。現在、第2弾も製作中で今年度中に発刊予定。 |
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▲人権教育実践に役立つ教材。ハンセン病を扱ったアニメーションビデオ教材「未来への虹」。クラスや学校単位で子どもたちと問題を共有するのに役立つ。 |
(財)人権教育啓発推進センターでは、人材教育に役立つ教材等も取り扱っている。
■問い合わせ先
(財)人権教育啓発推進センター
TEL : 03-5777-1802 FAX : 03-5777-1803
URL : http://www.jinken.or.jp/
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